6年前、英ロンドンで現金や宝石類など1400万ポンド(約25億円)が盗まれる事件が起きた。犯行に及んだのは平均年齢63歳のシルバー強盗団。史上「最高額で最高齢の金庫破り」の映画化である。

ロビンフッドのような義賊ではないが、高額所得者御用達の厳重な貸金庫をまんまと破った強盗団に、ひそかに喝采を送った市民は少なくないだろう。

「博士と彼女のセオリー」(14年)のジェームズ・マーシュ監督も強盗団側からこの事件を再現する。マイケル・ケインを頭に巧者ぞろいのキャスティングで、老いても衰えないテクニックと、それぞれに背負った人生の重みがにじむ。

若い頃には「完全犯罪」を成し遂げてきた彼らだが、防犯カメラとデータ解析を徹底したハイテク捜査には無頓着。金庫破りは完璧でも、犯行後は瞬く間に捜査の網が絞られる。「職人芸」が凡庸な捜査陣のハイテクに追い詰められる図式に、監督は時代に取り残された人々への愛情とノスタルジーを重ねている。

実行日のアクシデントを境に、後半は息苦しい展開だが、監督が思いをこめたラストシーンには不思議な安堵(あんど)感がある。【相原斎】

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