自民党が、夏の参院選を前に作成した「失言防止」のマニュアルを所属議員に配布し、話題になっている。同党では、「魔の3回生」による失言に始まり、最近では桜田義孝前五輪相や塚田一郎前国交政務官が、失言で政務三役の職を追われるなど、失言スキャンダルが多発している。衆参ダブル選の臆測も流れる中、一大決戦となる夏の選挙を前に、ふんどしを締め直すよう求めた格好だ。

でも、マニュアルがないと失言を防ぐことはできないのだろうか。あまりにも至れり尽くせりの対応で、老舗政党・自民党の議員の「言葉の質」が問われる、非常事態のようにも感じた。

マニュアルのうち、1枚のタイトルは「『失言』や『誤解を』防ぐには」だ。報道の内容には制限があるため、自らの発言は「切り取られて」使われることへの注意を促したほか、対応する記者が親しい場合でも「説明をはしょったり、言葉遣いが荒くなったりしないよう」にと、注意を呼びかけている。

注目すべきは、「タイトルに使われやすい『強めのワード』に注意」。 <1> 歴史認識、政治信条に関する個人的見解 <2> ジェンダー(性差)、LGBTについての個人的見解 <3> 事故や災害に関し配慮に欠ける発言 <4> 病気や老いに関する発言 <5> 気心知れた身内と話すような、わかりやすく、ウケも狙える雑談口調の表現を挙げ、これらは「表現が強くなる傾向がある」と指摘。場所や周囲の状況を踏まえ、自らの発言をコントロールしていくことが大切だ、と諭している。

「誰もがスマートフォンで写真や映像を発信できることを意識しましょう」との記述もあり、メディアがいなくても報じられるケースがあることを想定するよう、求めている。

リスク軽減の対策にも3点言及。2点目には「支持者や身内と使っている『危ない表現』を確認」とある。周囲の喝采や同調に引きずられると、「公で言うべきことではない」ことを口走る可能性があるとして、テーマに注意するよう求めている。確かに、最近の失言には、居酒屋で話しているんじゃないんだから~と、ツッコミをいれたくなる内容が多い。「日頃の言葉遣いを、第三者にチェックしてもらいましょう」と、これまた丁寧なアドバイスも付けられている。

聴衆に「届く」ための演説の心構えに言及したペーパーもあった。「聴衆を引き込む『ラジオパーソナリティー型』演説」を意識するほか、関西のバラエティー番組のやりとりを参考にするよう求めた「聴衆を参加させる『関西準キー局型』演説」など、かなり事細かなアドバイスだっだ。

このペーパーをすべて頭に入れ込めば、完璧な演説ができるだろう。でも、読後感のものさみしさといったら、ない。政治家は「言葉」が命といわれるからだ。人に言われて覚えることがあまりにも多すぎて、自分が本当に思ったことを訴えられるだろうか。少し、心配になってしまった。