至難な運転登山の末、日本三大秘境・椎葉村が誇る絶景ポイントが目の前に迫った。最後の急峻な上り坂を踏ん張り、木製の展望台が現れる。

椎葉村の大いちょう展望台
椎葉村の大いちょう展望台

向こう側の山が切り開かれていた。斜面に沿って民家が点在し、そのすき間のほとんどを棚田が埋め尽くしている。その名は「仙人の棚田」。秘境・椎葉村の象徴的景観として、いま密かに注目を集めている。なぜ仙人かというと、山あいゆえ朝霧が多く発生する椎葉村。朝日に照らされた霧や雲が幻想的で、天空に浮かぶ仙人の世界のように見えるとのこと。「椎葉のマチュピチュ」とも呼ばれているという。

展望台から眺める「仙人の棚田」
展望台から眺める「仙人の棚田」

平家の落人伝説が残る椎葉村。隠れ里の伝説が本当なら、壇ノ浦からよくここまでたどり着いたものだと純粋に驚く。戦いとは、そんなに激しく厳しいものだったのか。「仙人の棚田」と呼ばれるのは下松尾地区。生活水にも困る尾根にあり「下松尾には嫁をやるな」と言われていたという。約150年前にようやく水路が完成し、米生産や安定した生活が可能になった。

「仙人の棚田」の下松尾地区にズームイン
「仙人の棚田」の下松尾地区にズームイン

長野・下栗の里でも、そう思った。こんな山奥の尾根で生活していることを、純粋に尊敬する。ファミレスもなければ、コンビニもない。携帯電話のショップもないし、そもそも山道に入ってから電波は切れている。いま、身の回りに当たり前のようにあるものが、ここにはない。東京での1日も、椎葉での1日も、長さは同じ。いつかもし自分がここに引っ越すことになったら、何を考え、どう生活していくだろう。妄想の時間が楽しい。

「仙人の棚田」にさらにズームイン
「仙人の棚田」にさらにズームイン

静かな場所だから、はるか下の国道からのクラクションの音が、妙にはっきり聞こえた。そして思い出す。またあの「酷道」が待っている、と。よし! と意気込んで、再び車に乗る。どうか対向車が現れませんようにと願う。下りだから少しは気楽かなと思ったけれど、ここは格が違う。下り勾配がきつすぎて、カーブも多く、ブレーキの加減が実に難しい。

慎重にブレーキを踏みながら山を下りる
慎重にブレーキを踏みながら山を下りる

再び工事中の砂利道へ。よく見るとガードレールがない。怖すぎる。ここに工事車両を停めている工事業者を恨みたくもなるが、ここにしか停められないのだろうし、工事が進まないと展望台への道は酷なまま。この砂利道のカーブを過ぎると、人生でも指折りかもしれない恐怖が待っていた。まさかの、トラック登場。しかも躊躇せず迫ってくる。少し広い場所にバックし、ギリギリまで寄せ、あとは向こうの腕を信じるしかない。

観光客のために山道の整備が進んでいる
観光客のために山道の整備が進んでいる

目をつぶり、息を止める。ほんの10秒が、とても長い。目を開くと、無事すれ違えていた。一気に力が抜け、疲れが押し寄せてきた。たぶん、この道を走ることは二度とないだろう。頼まれても行きたくない。でも、椎葉にはまたいつか、きっと訪れるだろう。この秘境は、探れば底なしの魅力がありそうだ。【金子真仁】


Wonderful View No.110 “Shiiba village”

Shiiba-son is a village in the heart of a mountain of Miyazaki. Shiiba is one of

the Japan's three biggest unexplored regions. The access except the car is difficult, and there are many steep ways. We recommend that we accompany Japanese people if you want to go to Shiiba.