流氷船を待つ列は思ったより長く、乗船締切3分前滑り込みの私はほぼ最後尾。良い席など残っているはずは到底なく、室内席はやはり満席。寒い寒いデッキに追いやられ、氷点下のオホーツク海に旅立つことに。あーあ。


網走の観光港に停泊する流氷船
網走の観光港に停泊する流氷船

というのはウソで、流氷を屋内から見るつもりなど毛頭なく、喜び勇んで船外デッキへ。ただ、こちらも「ベスポジ」はすでに満席。その後ろに陣取る。船外は十分に見えるし、あとは流氷さえあれば、人生初流氷確定。見渡すと、凍える寒さなのに皆、ワクワクした表情をしている。出航。白い網走の街が、少しずつ離れていく。


出航し網走の港から離れていく流氷船
出航し網走の港から離れていく流氷船

足元のオホーツク海には、氷の板が散見するようになった。「流氷の子ども」といったところか。そして船の向かう先の水平線が、間違いなく白い。絵筆に白い絵の具をつけて、スーッと引いたように白い。


白く見える水平線が流氷の証
白く見える水平線が流氷の証

港を出て約20分後、船はついに沖の流氷群に迫った。とんでもない広さだ。島どころか大陸ではないかと錯覚させられる広さで、流氷群の向こうの水平線は依然、白い。各種統計によると、年によって変わってくるが、50万~100万平方キロメートルに及ぶそう。地球温暖化の影響で年々狭くなる傾向にあるようだが、実際に目撃すると圧倒的な広さに感じる。


どこまでも続きそうな圧倒的な「流氷大陸」
どこまでも続きそうな圧倒的な「流氷大陸」

サハリン北部にあるアムール川河口の海水が氷結し、北海道沿岸まで押し寄せる。流氷は海水が凍った現象。なめるとしょっぱい(らしい)。対して「氷山」と呼ばれるものは、万年雪が移動し(=氷河)、そこから分離したもの…らしいが、私には学術的説明は不要で、目の前の流氷に感動するばかり。一生に一度は見たかった流氷。まだ38歳。もう少し年輪を重ねてからでも良かったかな~とちょっと思いながら、また訪問できる確約はないから、しっかり目とレンズに焼き付ける。


間近で見ると流氷はそんなに分厚くないことが分かる
間近で見ると流氷はそんなに分厚くないことが分かる

定点でばかり撮影していても仕方ない。船内をうろうろする。誰もいない撮影場所があった。そこにアナウンスが響く。「皆様、進行方向右手にアザラシがおります」。一気に目が覚めた。報道の現場で日々培う集中力をフル回転させ、カメラのズーム最大でアザラシを探す。いた! ズームを合わせ、あぁ、これ以上はズームできないか。しかしそれで肩を落とさず、最大ズームでピントを合わせる。落ち着いてシャッターを押す。


写真ほぼ中央、流氷の上でアザラシがゴロゴロしていた
写真ほぼ中央、流氷の上でアザラシがゴロゴロしていた

連写しようとしたら、ゴロゴロと転がって海に入ってしまった。視認から、5秒も立たない間の出来事。撮れたことが奇跡。もっと大きいレンズを持って、アザラシの表情まで撮ってみたい。極寒の海に新たな夢が芽生えたところで、ホットコーヒーを求めて船内へ急いだ。【金子真仁】