「公式戦438試合451得点、1試合平均1.03得点」

これはクリスティアーノ・ロナウドが、欧州制覇13回を誇るレアル・マドリードで残したクラブ史上最多となる偉大な記録である。

バロンドール5回を獲得したポルトガルのエースが去ってから1年以上経った今でもレアル・マドリードにはその“幻影"に悩まされたままと言われている。

Rマドリードは、いかにしてこの“幻影"を消し去るべく闘ってきたのか。

2017-18シーズンの公式戦で44得点を記録したクリスティアーノ・ロナウドがユベントスへ移籍したのは2018年7月10日。さらにその前、チャンピオンズリーグ3連覇直後にジネディーヌ・ジダンが突然の監督辞任を決断した。Rマドリードの顔の二人が同時に欧州王者のチームから去ったのだった。

ここからRマドリードの迷走が始まっていく…

ジダンの後釜となったジュレン・ロペテギ監督のもとスタートした2018-19シーズン、誰もが感じていた不安が的中し、UEFAスーパーカップのアトレチコ・マドリード戦に2-4で敗れ、チームはシーズン最初のタイトルを落とすこととなった。

その後、リーグ開幕からの出だしは良かったが、決定的なチャンスでポストやクロスバーにシュートを当て続け、チームは得点力不足を露呈し、ロペテギは公式戦4試合連続無得点を記録した“クラブ史上3人目の不名誉な監督"となった。そして昨年10月28日にカンプ・ノウで開催された“クラシコ"に5-1で敗れたことが決定打となり、リーグ戦5戦連続未勝利の中で監督解任となった。

新たに監督を務めたサンティアゴ・ソラーリは、マルセロやイスコなどのベテランを外し、ヴィニシウスやレギロンなどの若手を重用する強行策を行い、年末のクラブW杯で3連覇を成し遂げたが、今年2月から3月にかけて悪夢の1週間が訪れる。バルセロナ相手に国王杯とリーグ戦、さらにアヤックスとのチャンピオンズリーグに敗れ、わずか7日間で3タイトル全てを落とし更迭されたのだった。

この衝撃的な敗北の流れに大舞台で圧倒的な存在感を放つクリスティアーノ・ロナウド不在を誰もが嘆いた。「ロナウドがいたら…」、その“幻影"はさらに大きくなり続けていく。

3月11日、迷走を続ける欧州王者に再びジダンが監督として就任。悪い流れを断ち切るべく、クラブは再度彼に全てを託した。ほぼ消化試合となったリーグ戦残り11試合でジダンは来シーズンに向けたテストを次々と実施するも、大きな成果を上げることができなかった。

そんな中、ベンゼマが唯一の光となる。肉体改造で身体を絞り、ジダン指揮下で出場した9試合で8ゴールを決め、クリスティアーノ・ロナウドに匹敵する得点力を発揮した。そして昨シーズンの公式戦通算30ゴールを記録し、Rマドリードで自己2番目となる最多得点のシーズンを送った。

しかしチームの公式戦通算敗北数はクラブ史上ワースト2位となる18敗。リーグ戦はバルセロナ、アトレチコに次ぐ3位。総得点数63はクラブ史上、21世紀のリーグ戦の最少得点数である。

一方、クリスティアーノ・ロナウドがRマドリードで最後にプレーした2017-18シーズンのリーグ戦総得点は94。昨シーズンは得点数が約3分の2に低下しており、改めてクリスティアーノ・ロナウドの存在感を知らしめるものとなった。

Rマドリードは今夏、クリスティアーノ・ロナウドの“幻影"を消し去るべく、久々の大型補強を敢行した。1億ユーロ(約120億円)の移籍金で入団したアザールを筆頭に、ミリトン、ヨヴィッチ、メンディ、ロドリゴに合計約3億ユーロ(約360億円)を費やした他、アレオラが期限付き移籍で加入している。

しかしここまでのところ新入団選手が攻撃力の上積みになっているとは言い難い。アザールの入団は久しぶりに訪れた大きな希望となっているが、開幕戦直前の負傷で約1ヶ月の戦線離脱を余儀なくされ、体重増加を指摘されるなど、チェルシー時代に魅せた“アザールらしい"プレーをまだ欠いている。

昨シーズン終盤からベンゼマは高い得点力を維持しているものの、唯一無二の存在であったクリスティアーノ・ロナウドの役割を最後まで務めるのはおそらく不可能だろう。そのため、ジダンが記者会見で事あるごとに「25人全員を戦力にみなしている」と話している通り、皆でカバーしなければならない。

Rマドリードはここまでリーグ戦8試合を戦い首位に立っているが、チャンピオンズリーグでは1次リーグ2試合で1分け1敗の最下位となっており、早々に大会敗退の危機に追い込まれている。

その懸念を払拭し、今後チャンピオンズリーグ3連覇を成し遂げた時のような攻撃力を取り戻すには、アザールの完全復活、ヴィニシウスの復調、ヨヴィッチのゴール、ロドリゴの台頭が待たれるだろう。

その一方、ベイルが怪我もせず優れたパフォーマンスを見せ、バイエルン・ミュンヘンから復帰したばかりのハメスが即座にチームにフィットしていることは朗報である。

シーズンはまだ始まったばかり。Rマドリードがいつクリスティアーノ・ロナウドの“幻影"を消し去るのか、その瞬間が早々に訪れることを期待したい。【高橋智行】

(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)