新生立浪ドラゴンズに、待望の正捕手が誕生しようとしている。田村藤夫氏(62)は秋季キャンプを見て、中日の捕手陣を幅広く分析した。

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中日郡司(2020年6月撮影)
中日郡司(2020年6月撮影)

木下拓が正捕手の座を手中に収めようとしている。攻守にわたる今季の成績は高いレベルにあった。チーム防御率3・22、失点478はいずれもリーグ1位。これは、123試合に出場した木下拓のリードがあっての成績と言える。

個人の成績として打率2割7分、11本塁打は、捕手としては胸を張れる数字だろう。近年のセ・リーグの中では捕手として一定の評価されるべき成績だ。課題は規定打席443に50打席足りなかった部分。試合数換算では10試合強。規定打席をクリアしてこの数字なら、不動の捕手も近づく。

中日石橋(2019年6月撮影)
中日石橋(2019年6月撮影)

秋季練習では若い捕手が野手のポジションに取り組んでいた。慶大で打力を評価された2年目の郡司、強肩強打の高卒3年目の石橋。2人に共通するのはバッティングだ。郡司は外野を、石橋は三塁の守備についていた。2人はフェニックスリーグでも交互に捕手を守り、外れた方が三塁を守っていた。

これも捕手を強化するための避けては通れない現実と感じる。今のプロ野球では打てる捕手の価値がより高まっている。特にセ・リーグではその傾向が強い。

パはDHがあり、打てない捕手をカバーできる面があるが、セは投手も打席に入る。極端な言い方をすると、終盤に代打を使ったとしても、投手が2打席入ると仮定すると捕手と投手で1試合でおよそ6打席。この6打席でヒットが期待できないようでは攻撃力の大きなマイナスになる。

今季の木下拓のように2割7分も打ってくれれば問題ないが、そうそう出せる数字ではない。郡司、石橋にはバッティングに魅力があるが、肝心のリードを含めた守備での実力はまだまだ木下拓には及ばない。木下拓が来季も捕手として試合に出場することが予想される中、打てる捕手を育てることと、守れる捕手に経験を積ませることは、相反する。

同じ背景があるからこそ、セ・リーグでは打力が期待できる捕手が野手との併用で起用されるケースが少しずつ出てきた。広島坂倉、巨人大城などがそれにあたる。

中日は谷繁以来、不動の正捕手は育ってこなかった。待望の正捕手誕生の期待が高まる中、木下拓をバックアップする「打てる捕手」という難問に中日は直面している。私は17、18年は中日の1軍、19年は2軍バッテリーコーチを務めた。正捕手を育てられなかった責任の一端を担うものとして、こうした評論は心苦しいのが正直なところだ。

最後に。正捕手候補がいること自体、非常に前向きな材料であることに間違いない。(日刊スポーツ評論家)

(つづく)