田村藤夫氏(62)が、フェニックスリーグでの中日大卒2年目・郡司裕也捕手(23=仙台育英-慶大)のスローイングを題材に、盗塁の正否を分けるスローイングを解説する。

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19日のDeNA戦で、郡司は2回に田部の盗塁を刺した。捕球から送球まで素早く、送球も正確だった。盗塁をアウトにする捕手の力量について、基本的なところから説明したい。

来月上旬からクライマックスシリーズ(CS)が始まり、下旬の日本シリーズへ、短期決戦の季節が来る。18年の日本シリーズでは、ソフトバンク甲斐が6連続盗塁刺で広島の「足」を封じた。この時期になると配球はもとより、盗塁を防ぐ捕手の存在がよりクローズアップされる。

走者がスタートを切る時、もっとも大切なのは投手のクイックの質になる。その質を判断する目安は、投球モーションを始動してから捕手が捕球するまで1秒25以下なら盗塁は難しくなり、それ以上かかるようだと盗塁成功率は上がる。変化球はストレートよりもタイムがかかる。ストレートで1秒25以内と考えるとわかりやすい。一般的に遅い変化球のカーブでは1秒4はかかってしまう。

バッテリーにとって最高なのは、捕手が盗塁を刺すことではなく、走者が盗塁を企図しないことだ。クイックの素早さと、捕手の正確なスローイングで、走者に盗塁の意欲を起こさせない、抑止する。盗塁をさせないためにはまずはクイックが重要になる。

クイックの質のレベルによって、走者は盗塁の可能性を見いだし走ってくる。ここで捕手の能力が問われる。今度は投球を受けてから、二塁に入った野手が捕球するまでのタイムが1秒90以下なら捕手のスローイングとしては合格。それ以上なら改善の余地あり、となる。

捕手からの送球を受けた野手は、今度は走者にタッチする動きに入る。送球がそれればタッチまでのタイムがかかりセーフになる可能性は高まる。一般的に野手が受けてからタッチまでが0秒1。投球を捕球して野手が走者にタッチするまでを2秒以内に収めれば、レベルは高い。

捕手の送球時の注意点として、イラスト(※)のように、ベースの右半分の三角形を目指して投げること。左半分の三角形に投げてはタッチまでの時間がよけいにかかる。左半分よりもさらに三塁側にそれてしまえば、もうアウトにするのはノーチャンス。

二塁ベース右半分に、そしてベースに入る野手が中腰になることを踏まえ、そのベルトよりも下に投げると、タッチまでのタイムが短くなる。捕手の送球としてはベースの右半分、そして野手のベルトより下、このコースが理想的だ。

ベースの左側にそれること、野手の顔よりも上に投げること、これではアウトにする確率はかなり低くなる。

走者のスタート、スピード、スライディングなどの技術と、クイックの質と捕手のスローイングによって、際どい場面となる。

二塁ベースを真上から見て、斜線を引いたベース右半分の三角形への送球が理想的(田村藤夫氏提供)
二塁ベースを真上から見て、斜線を引いたベース右半分の三角形への送球が理想的(田村藤夫氏提供)

捕手の送球は捕球時の体勢によって大きく変わる。もっともいいのは体勢が崩れず二塁へストレートを投げられること。しかし、左打者の時は左にステップしながら、体が流れるのを我慢しながら、送球にシュート気味に投げた。そうすることで、ベースの右半分に投げる工夫をする。

私の場合はリリースの瞬間に人さし指の指先の感覚でシュート気味になるよう調整していた。ただし、送球がベースよりもさらに右へそれると、スライディングしてくる走者とタッチにいく野手が激突する可能性が出てくる。送球がベースより右に行き過ぎないよう気を付けていた。

最後に、郡司が盗塁を刺した送球は良かった。一方で、イニング間の二塁送球ではショートバウンドが散見された。イニング間の送球は相手ベンチが見ている。ショートバウンドをたびたびしていると、「走らせよう」とベンチは思う。もちろん、野手もそこは確実に観察している。隙を与えない。盗塁を企図させない、それがバッテリーには何よりも大切だ。

短期決戦では投手のクイックの質を頭に入れつつ、けん制の癖を見抜き走者は二塁を狙ってくる。そこでカウントによってストレートか変化球か、という捕手との駆け引きが生まれる。ファンが固唾(かたず)をのんで見入る、走者とバッテリーのハイレベルなシーンを期待したい。(日刊スポーツ評論家)