エンゼルス大谷翔平投手(27)が最有力候補に挙がる、全米野球記者協会選出のア、ナ両リーグMVP発表が近づいています。18日(日本時間19日)の最終発表に先立ち、8日(同9日)に最終候補者3人の名前が明かされます。

歴代の受賞者を見ると、必ずしもMVPの最有力候補者が順当に選ばれるとは限りません。なぜなら、投票する記者たちに偏りや個人的感情、つまり対象選手への「好き嫌い」があるからです。過去には「番狂わせ」もありました。

「打撃の神様」テッド・ウイリアムズ外野手(レッドソックス)は1941年、驚異の打率4割6厘をマーク。大リーグで「最後の4割打者」として語り継がれています。一方、その時代に最大のライバルだったジョー・ディマジオ外野手(ヤンキース)は、不滅の大記録となる56試合連続安打を達成。甲乙付けがたいア・リーグMVP争いに注目が集まりました。結果は、ディマジオが291対254で競り勝ちました。

ウイリアムズは翌42年、リーグトップの打率3割5分6厘、36本塁打、137打点で3冠王を獲得。しかし、無冠ながら攻守にわたる活躍でリーグ優勝に貢献したジョー・ゴードン二塁手(ヤンキース)がMVPに輝き、まさかの落選。47年には打率3割4分3厘、32本塁打、114打点で2度目の3冠王に輝きましたが、またしてもディマジオにわずか1点差で涙をのみました。

これはひとえに、彼の性格が災いしたといわれています。一匹おおかみでネクタイも締めない粗野な人、無愛想といった評判が定着し、メディアも敬遠。全米の記者たちが投票を控えたからです。

同様に、「数字」を上回る要素がMVPを決定する出来事がありました。1995年、モー・ボーン内野手(レッドソックス)が大接戦の末、ア・リーグMVPに輝きました。打率3割、39本塁打、126打点と持ち前のパワーを発揮し、地区優勝に貢献。本塁打と打点の2冠王に輝き、MVP本命と目されたアルバート・ベル外野手(インディアンス)をわずか8点差で下しました。

メジャーを代表する「人格者」が、「問題児」ベルを抑えての受賞となりました。ボーンは奉仕活動に精を出す善良市民の代表であり、報道陣にも愛されました。一方、ベルはコルクバット疑惑やリポーターへの暴言など問題が絶えず、2人の性格が投票結果に影響を与えたことは否めません。

各リーグで投票できるのは、全米中から選ばれた記者30人のみ。このように成績だけでなく、キャラクターも選考を左右することがあります。その点では、大谷はファンだけでなく報道陣にも愛される「nice guy(いい人)」だけに、投票する記者たちも100%、味方してくれそうです。【大リーグ研究家・福島良一】