大リーグは今週からいよいよ表彰ウイークに入ります。全米野球記者協会(BBWAA)選出による各賞が次々と発表されます。最大の注目は、エンゼルス大谷翔平投手(27)が最終候補3人の1人でノミネートされる18日(日本時間19日午前8時)のア・リーグMVPです。

MVP投票では過去に幾度となく番狂わせがありました。その背景には選手の性格だけでなく、チーム成績が影響を与えるところもあるからです。なぜならMVPは「Most Valuable Player」の略。直訳すれば、最も価値ある選手。つまり、チームの勝利に最も貢献した選手に贈られる賞だからです。それが、大谷がすでに幾つも受賞してきた「プレーヤー・オブ・ザ・イヤー(年間最高選手)」、つまり個人の成績だけで選ばれる賞との決定的な違いです。

大谷が所属するエンゼルスは今季、ア・リーグ西地区4位と低迷。過去に下位チームからMVPが選出されるたびに議論を呼んでおり、今回も大谷への投票に疑問を唱える投票者はいるでしょう。しかし、今シーズンは数々の歴史的偉業を成し遂げており、チームの優勝、もしくはプレーオフ進出に貢献した選手よりも、価値ある成績を残したといえます。

大リーグではMVPの評価方法も大きく変わりました。一昔前のMVP受賞者を一覧すると、野手で最も比重が高いのは打点でした。しかし近年、セイバーメトリクス(野球統計学)の浸透により、重視されているのは「WAR」というチーム勝利への貢献度を示す指標です。

米データサイトFanGraphsによると今季、大谷は両リーグトップのfWAR8・1をマーク。最大のライバルと目されるウラジーミル・ゲレロ内野手(22=ブルージェイズ)の同6・7を大きく上回っています。

さらに記者投票で影響力が大きいのは、「wRC+」と「wOBA」という2つの指標です。wRC+は得点創出力を示す指標、wOBAは打者の攻撃力を測る指標で得点価値を加重した、いわゆる加重出塁率です。

今季wRC+のア・リーグ1位はゲレロで166、2位が大谷で152でした。wOBAでも1位がゲレロで・419、2位が大谷で・393でした。しかし、その差はわずかであり、総合的に判断して大谷の受賞は濃厚であり、チームの勝利以上に、野球界に最も貢献した選手として評価されるでしょう。

もしかすると、30人の投票者全員が1位票を投じる「満票」選出があるかもしれません。チーム成績を考えると賛否両論あるでしょうが、本格的な「投打二刀流」実績での選出となれば史上初です。

MVPは1911年に始まりましたが、元祖二刀流のベーブ・ルースは「2ケタ勝利&2ケタ本塁打」を達成した1918年、9勝を挙げて2年連続本塁打に輝いた1919年ともMVPではありません。不幸にも、スポンサー撤退の影響でMVPが中断された時代(1915~1921年)と重なりました。歴史的価値からも、史上19人目の満票選出に大いに期待したいところです。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)

エンゼルス大谷翔平(21年9月25日撮影)
エンゼルス大谷翔平(21年9月25日撮影)